東京大学医学部附属病院 予防医学センター

健康コラム

健康コラム

慢性閉塞性肺疾患(COPD)ってどんな病気?

疫学

COPDはたばこの煙等の有害物質の吸入や大気汚染に長期に暴露されることによって生じる慢性炎症性の肺の疾患です。我が国でも500万以上の患者さんが存在すると推定されています。喫煙が最大の原因であり、喫煙されている方の15~20%がCOPDを発症すると言われており、喫煙量やタバコに対する感受性(遺伝的要因)が発症に関与すると考えられており、世界的に研究が行われています。

症状

肺に慢性的な炎症が起こる事で、咳嗽や喀痰が慢性的な症状として出現します。また、健康な人でも加齢に伴って肺の機能が低下しますが、喫煙者でタバコの煙に感受性がある人では1秒間に吐き出すことのできる空気量(1秒量:呼吸機能検査で測定します)が低下することが分かっており、身体を動かした時に息切れを感じる労作時呼吸困難の原因となります。
また、慢性的な症状に加えて、風邪や気管支炎などの感染をきっかけとして急激に咳や痰や息切れの症状が悪化する急性増悪という状態が起こることもあり、呼吸不全の原因となり命に関わることもあります。特に重症度が高い患者さんに起きやすいです。

診断

主に慢性的に呼吸困難をきたす代表的な病気が図1ですが様々なご病気があります。問診、身体診察や血液検査、画像検査、心電図検査、呼吸機能検査など検査を組み合わせることで診断を行いますが、特に呼吸機能検査の1秒量や1秒率(1秒量÷肺活量)の低下が診断に重要です。
画像検査では、胸部レントゲンに加えて胸部CTで気腫性病変(図2のように肺のCTで黒く抜けた部分として写り、肺の構造破壊の結果生じます)の検出が可能です。

図1 主な慢性的な呼吸困難をきたす疾患

図2 CT画像所見

治療

まずは、禁煙が第一です。禁煙をすることで今後進行する肺の機能の低下の度合いを軽減する事ができます。また、ワクチンを含めた感染の予防・対策が重要です。
次に症状や検査による重症度によって異なりますが、主に気管支拡張薬(抗コリン薬、β2刺激薬)の吸入を行って治療を行います。最新のトピックスとしては2018年のガイドラインでは、急性増悪の既往の多い症例では、抗コリン薬の吸入が特に推奨されるようになりました。さらに今年2月には抗コリン薬とβ2刺激薬を組み合わせた合剤の吸入が呼吸機能の改善だけでなく、心臓の機能の項目の一部について改善の可能性を示す結果が報告されており、注目されています。さらに重症度の高い方では酸素吸入療法を行います。
上述しましたように、我が国でも多数のCOPDの患者さんの存在が推定されていますが、大多数の方が未診断、未治療であることが問題であり、実際に症状が出現して医療機関を受診された際には、かなり病状が進んでいるケースもございます。禁煙が重要なのは、もちろんですが、診察や呼吸機能検査や画像検査によって症状が出現する前にCOPDの有無の状態を把握する事が可能です。症状が無い方でも喫煙歴がある方は検診によるスクリーニングの検査をお受けになっていただくことをお勧めいたします。

(松崎博崇)

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