東京大学医学部附属病院 予防医学センター

健康コラム

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心房細動ってどんな病気?

こんにちは。今回は心臓病のひとつである心房細動についてご紹介してみたいと思います。みなさんは心臓の病気というとどういうイメージをお持ちでしょうか?今回紹介する心房細動は、いわゆる心臓発作と呼ばれる狭心症・心筋梗塞とは異なりやや専門性の高い病気ですが、みなさんの健康にも大きく関与し得る病気です。このコラムで少しでも心房細動に関する知識を身につけてくださると幸いです。

機序・概説

正常な心臓は、安静時に1分間60~100回拍動するよう洞結節によってコントロールされています。しかし、心房細動になると心房は無秩序に1分間に300~700回も興奮するようになり、動悸・息切れ・易疲労感などの症状が現れ、中には重篤な脳梗塞を発症する方もいるので適切な診断と治療が重要です。右に検診で心房細動と診断された患者さんの心電図をお示しします。図2の心電図では図1と比較して基線に細動波が見られ、心拍も不整となっており、心房細動の心電図所見です。

図1 正常洞調律時

図2 心房細動発症時

疫学

我が国の疫学調査によると、心房細動の有病率は男女とも加齢とともに増加し、男性に多いとされています。その有病率は50歳代男性で0.8%、女性0.1%、70歳代では男性3.4%、女性1.1%とされ、国内で70万人以上の方が心房細動を有するとされています。心房細動発症の危険因子としては年齢の他、弁膜症や虚血性心疾患などの基礎心疾患があることや飲酒、高血圧などが知られています。

症状

心房細動では動悸や息切れ、易疲労感がしばしば出現します。また、心房細動を放置しておくと、心不全によるむくみが出現するようになったり、心房内の血流が悪くなることで血栓が生じ、脳梗塞による突然の麻痺が出現することも知られています。脳梗塞の原因は複数のメカニズムが知られていますが、心房細動による脳梗塞は15%とその割合こそ少ないものの、最も重篤な麻痺や後遺症を起こしやすいとされており、適切な診断と治療が重要です。

診断

心房細動の診断は12誘導心電図により行います。また、心房細動が確定した際にはホルター心電図(24時間心電図)による心拍数の評価や、心臓超音波検査による心臓収縮の評価、弁膜症の有無などをチェックします。
あと、最も簡便な診断方法のひとつとして御自身でできる方法がありますが何かわかりますか?正解は、当HPの自身で可能な健康チェック欄にも記載がありますが、検脈(リズムチェック)です。検脈は慣れるまでは少し難しいかもしれませんが、みなさんの健康チェックにとって非常に有用な情報をもたらしてくれるので、自宅での血圧測定に加え検脈も是非取り入れてみてください。

治療

心房細動の治療は発症してからの持続期間により異なりますが、主に薬物による除細動(正常なリズムにもどすこと)、心拍数コントロール及び脳梗塞の予防が挙げられます。不整脈に対する薬物治療は非常に有用な手段であるものの、副作用に対する注意も必要ですので専門医による治療が望ましいと考えます。また、薬物治療に難渋し、かつ根治が期待できる患者さんにはカテーテルアブレーション(高周波発生装置を用いた心筋焼灼術)も最近広く行われるようになっていますので、主治医の先生と相談しながら適切な治療法を選択していくことが重要です。

以上、簡単ではありますが、心房細動について紹介させていただきました。当予防医学センターでも毎年新規発症の心房細動の方が見つかっております。心房細動の診断が確定した際には適切な対応をさせていただきますので、ご安心して検診を受けていただければと思います。

(山口敏弘)

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