東京大学医学部附属病院 予防医学センター

健康コラム

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脂肪肝ってどんな病気?

名前の通り、脂肪が肝臓内に溜まってしまった状態を脂肪肝と言います。人間ドックでは、一般的に腹部エコーで肝臓が腎臓より白く見えること(肝腎コントラストと言います)で診断されます(画像1: 正常の肝臓、画像2:脂肪肝)。
脂肪肝はよほど進行して肝硬変や肝がんまで進展しないと自覚症状は出ないため、健康診断などで初めて指摘されることがほとんどです。日本でも増加しており、男女合わせると30%程度、男性の人間ドック受診者では約半数に認められたという報告もあります。
このように非常に頻度が高いため、逆に重大な疾患であるという認識が乏しくなりがちですが、実は肝臓だけでなく、心筋梗塞や脳卒中、糖尿病などの危険性を高めるなど全身への影響もあり、とても重要な疾患です。
本コラムでは、脂肪肝の原因や大切さ、診断された場合の対処法などについて解説していきます。

  • 画像1 正常の肝臓(写真の左側が肝臓、中心の楕円形の臓器が腎臓です)
  • 画像2 脂肪肝(肝臓が腎臓より白くなっており、肝腎コントラストが認められます)

脂肪肝の原因

表1のように様々な要因が脂肪肝を引き起こしますが、以前はアルコールを多量に摂取することによる影響が一番大きいと考えられていました。しかし、アルコールをほとんど摂取しない方にも脂肪肝が多く認められることが明らかとなり、非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease, NAFLD)と呼ばれ注目されています。
その中でも肝臓に強い炎症が起こり、肝臓が壊れたり再生したりを繰り返した結果の線維化が生じている状態を非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steatohepatitis, NASH)と呼び、肝硬変や肝がんへの進行に加えて、糖尿病や心血管イベント(心筋梗塞や脳卒中など)のリスクが特に高まるとされています。本邦にNAFLD1000-2000万人、NASH100-200万人の患者さんがいらっしゃるのではないか、と推計されています。

表1 脂肪肝の主な病因

飲酒 いくつかの薬物
肥満・
メタボリックシンドローム
膵頭十二指腸切除術後
糖尿病・脂質異常症・高血圧 睡眠時無呼吸症候群
様々な内分泌・代謝疾患 など

●脂肪肝は悪い病気?

冒頭に非常に頻度が高いため、逆に重大な疾患であるという認識が乏しくなりがちであるというお話をしましたが、脂肪肝は実は肝臓だけでなく、心血管イベントや糖尿病など全身への影響もあり、とても重大な疾患です。
特に非飲酒者の脂肪肝NAFLDでは、心血管イベントを起こすリスクは一般住民に比較して約2倍であることが明らかになっています。
さらにNAFLDの10-20%が進行性のNASHとされており、NASHの患者さんでは5-10年の間に5-20%の方が肝硬変に進んでしまいます。肝硬変に進行したNASHでは、5年で約10%の方に肝がんが発症したと報告されています。

●脂肪肝と言われたら

治療の第一は食事や運動といった生活習慣の改善であり、肥満者では7%の減量が目標とされています。そして糖尿病・脂質異常症・高血圧といった基礎疾患がある方はその治療が大切です。ビタミンEの投与がNASHを改善したという報告がありますが、今のところNASHに対する保険適応はなく、NAFLDおよびNASHに対する直接的な治療薬はまだ確立していないのが現状で、世界中で治療法の開発が進められています。

(消化器内科 奥新和也)

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