東京大学医学部附属病院 予防医学センター

健康コラム

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過敏性腸症候群とは?

過敏性腸症候群は、腸炎や腫瘍といった器質的疾患がないにも関わらず、腹痛、下痢や便秘といった便通異常が持続する状態をいいます。簡単に言うと、採血検査や内視鏡検査を行っても異常はないのに腹痛や便通異常が長期間続く状態の事です。
およそ10%の人が過敏性腸症候群と言われており、消化器診療の中では多い疾患の1つです。女性に多く、また10~20代が高頻度で加齢とともに減少することが知られています。ただし、高齢者では再度頻度が上昇するとも言われています。
過敏性腸症候群の発症原因については分かっていないことも多いのですが、ストレスや腸の知覚過敏、腸の異常な動き(蠕動異常)などが関与していると考えられています。ストレスを感じると、自律神経が乱れ、腸の蠕動異常につながり、腹痛や便通異常といった症状が出現します。また、腸の知覚過敏によって、普通であれば感じないようなわずかな蠕動異常に対して痛みを感じたり、わずかな腸管内のガスの貯留に対しても、おなかが張った感じがするなどの不快感を覚えるようになります。
ストレスや緊張を感じやすい状況下、例えば社会人であれば出社時や勤務中、会議中など、学生であれば、登校中、授業中、試験中などに症状が出やすく、その一方で、睡眠時や休日などストレスを感じにくい時にはあまり症状が出ません。
真面目で几帳面な性格の方、また緊張しやすい方に多いとされています。命に関わる病気ではありませんが、日常生活の支障となり、生活の質(Quality of Life)を低下させます。まさにストレス社会特有の現代病と言っても過言ではありません。

診断について

  1. 食事・運動
    以下に気を付けた食事・運動が推奨されています。
    (1)規則的な食事をする。
    (2)水分を十分とる。
    (3)食物繊維は多く摂る。
    (4)脂質、カフェイン、香辛料を多く含む食品、乳製品を控える。
    (5)適度な運動を行う。
  2. 薬物療法
    過敏性腸症候群に対する薬物療法は下痢や腹痛、便秘の諸症状に応じて図1のようなものがあります。実際の臨床では、図1にあるような薬剤を色々と試していきながら、それぞれの患者さんにあうように調整していきます。

図1 過敏性腸症候群の治療薬

さいごに

過敏性腸症候群かな?と思い当たる症状がある場合には、一度消化器の専門医に相談されることをお勧めします。

参考文献

機能性消化管ガイドライン2020-過敏性腸症候群(IBS)(改訂第2版) 日本消化器病学会編

(予防医学センター/消化器内科 深川一史)

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