東京大学医学部附属病院 予防医学センター

健康コラム

健康コラム

「コロナ太り」、気になりませんか?

3月4日は何の日でしょうか?

最近、人間ドックをお受けになる皆様や、外来診察にいらっしゃる患者さん方から、「コロナ太りで困っています」というご相談を受ける機会が増えました。新型コロナ肺炎の感染対策として人混みを避け、家で過ごすため運動量が減ったり、ストレスからお菓子をたくさん食べてしまったり・・・体重増加にお悩みの方は多いと思います。
そこで今回のコラムでは、肥満について取り上げることにいたしました。図1をご覧ください。世界で肥満は年々増え続け、深刻な問題となっています。そこでWHO(世界保健機関)は、肥満症の予防や治療の重要性を呼びかけ、3月4日を世界肥満デーと定めました(図2)。
最近10年の日本の状況もお示しします。BMI(BMIは後で説明します)が25以上ある方を「肥満者」と定義しますが、男性の約3割、女性の約2割以上が肥満に該当し(図3)、幅広い年代層にみられます(図4)。これは新型コロナ肺炎流行前のデータですので、もしかしたら最近はもっと多くの方が肥満に該当するかもしれません。

3月4日は何の日でしょうか~世界における肥満~

日本における肥満の推移

日本における肥満の割合

肥満かどうかを調べるには?

体の中に脂肪が蓄積した状態を、肥満といいます。健康番組などで、「内臓脂肪」という言葉をお聞きになったことはありますか?肥満症は、内臓脂肪が必要以上に体にたまってしまい、様々な病気を引き起こす病態のことです。
ご自分に内臓脂肪がどのくらいあるか、気になりませんか?CTやMRIなどの画像検査を受けていただくことで、「内臓脂肪面積」を測ることが出来ます。しかし、CTやMRI検査は、被ばくや費用などのハードルがあり、すぐに受けられる検査ではありません。
そこで簡単な検査として、身長と体重を測って、BMIを計算する方法があります。BMIは、Body Mass Indexの略で、[体重(kg)]÷[身長(m)の2乗]で計算し、25以上を肥満と定義します。例えば、身長168㎝、体重87㎏の方は、87/1.68/1.68=30.8のBMIとなり、肥満の診断となります。他に、ウエスト周囲長(腹囲)も測定なさることをお勧めします。腹囲は、男性85cm、女性90cm以上で、「内臓脂肪がたまっている」と推定することが出来ます。

肥満はどういう病気でしょうか?

肥満は、今すぐに病的な問題を生じる病態ではありませんが、様々な病気を引き起こしてしまいます。では、どのような病気を思い浮かべますか?例えば、体重が増えて膝や腰の痛みがつらくなったご経験をお持ちの方は多いと思います。「太ったから仕方がない」とあきらめるのではなく、肥満のせいで起きている病気であると認識し、しっかりした治療を受けることが大切です。
何より恐ろしいのは、自覚症状が出にくい病気にもかかりやすくなります。糖尿病(耐糖能異常)や脂質異常症、高血圧は、肥満が原因となり発症する病気の代表です(これらの病気は、以前にこの健康コラムで取り上げていますので、あわせてお読みください)。こうした病気は、狭心症や心筋梗塞、脳卒中といった命取りになる病気も引き起こします。他に、高尿酸血症(痛風)や脂肪肝、睡眠時無呼吸症候群に加え、月経の異常や、腎臓病なども、肥満が引き金となって発症することをご存知でしたか?
最近では、肥満が新型コロナ肺炎のリスクであり、肺炎が重症化しやすいことも分かってきました。図5をご覧ください。もともと様々な病気を抱えている肥満の方は、臓器が弱った状態にあります。ウイルス感染により、さらに臓器にダメージを与えてしまい、重症化しやすいと考えられています。つまり、新型コロナウイルスから生き延びるためにも、肥満の治療が必要になります。

肥満は新型コロナ肺炎の重症化リスク

肥満の治療はどうすればよいのでしょうか?

肥満症の治療は、体重の減量をすることが重要です。いわゆるダイエットに取り組んでいただきます。食事療法と運動療法が基本ですが、時に薬物治療や、外科的な手術を受ける方法もあります。ただし、持病を治療中の方や、ご年配の方やお子さん、妊娠中の方などは、必ず(通院中の)医療機関にご相談ください。自己流のダイエットは危険で、リバウンドしてしまったり、病気が悪化したりすることもあります。
なお東大病院では、糖尿病・代謝内科において肥満症に対する積極的な治療を行っており、外来診療に加え、減量入院にも取り組んでいます。安全で効果的な減量を心がけており、1人1人の患者さんに最適な減量方法を一緒に見つけていくため、外科や心療内科など他の専門科と協力したり、看護師、栄養師、理学療法士など複数の専門職が協力し合って、減量のお手伝いをしています。詳しくは、東大病院糖尿病・代謝内科のホームページもご参照ください(内容は適宜更新されます)。
また、頻度は少ないですが、肥満には「二次性肥満」といって、ホルモンのバランス異常や薬の副作用など、他の病気が原因で肥満になる場合もあります。この場合は、原因となる病気の治療が必要です。そのため、肥満や体重増加にお悩みの際は、お気軽に医療機関にご相談ください。皆様のご不安を、少しでも解決していけるように私達も頑張ってまいります。

(升田紫)

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