東京大学医学部附属病院 予防医学センター

健康コラム

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心房細動

心房細動は我が国では71.6万人が罹患していると推定されている不整脈です。心房細動の有病率は、年齢が進むにつれて上昇することから、高齢化にともない、年々増加傾向しています。
2050年には心房細動患者は約103万人、総人口の約1.1% を占めると予測されています1。心房細動は脳梗塞、心筋梗塞、心不全および死亡などの心血管疾患発症リスクと関連しています。心房細動により心臓内に血栓が形成されることで、脳梗塞や心筋梗塞が発症しやすくなります。それ以外にも、心房細動が長期に持続することで、弁膜症や心不全発症のリスクが高まることが分かっています。

心房細動は動悸・息切れ・疲れやすさなどの症状がみられることがありますが、約7割の方が無症状であるといわれており、これが心房細動の診断が困難となる理由となっています。このため、残念ながら、30~50%の方が脳梗塞発症してから心房細動が診断されています。心房細動は適切に診断され、早期に血栓をできにくくする抗凝固療法や心房細動を止める治療を行うことができれば、脳梗塞や心不全発症リスクを減少させ、死亡率も減少させることができます。そのため、早期に無症状のうちから心房細動を見つける試みが行われてきました。

無症状の心房細動(以下、無症候性心房細動)は、長時間心電図を計測すればするほど、診断率が高くなることが分かっています。最近では心房細動の診断率を上げるために様々な医療機器が開発されて実用化されています。例えば、植込み型心臓モニターは小型の機械(約5cm×6-7mm 厚み7mm程度)で、胸の皮下組織に直接植え込み、24時間心電図を記録することができます。外来で10分ほどの所要時間で植え込みを行うことができ、手術翌日には入浴も可能です。電池寿命は約3年で、長く記録すればするほど、診断率が向上します。また、遠隔モニタリング機能がついており、自宅にいる間にも遠隔で不整脈の検出をすることができ、不整脈の診断率が向上に寄与しています。

植え込み型心電計

しかし、このような医療機器ではなく、患者さん自身である程度の不整脈を知ることができます。一番簡易な方法は、自分で脈を測る(検脈)ことです。手首の親指側に橈骨動脈という太い動脈が流れていて、そこを指で押さえると脈を触れることができます。脈をとるポイントはリズムが一定かどうか、1分間に脈拍がどのくらいかです。10秒間脈をとり、その数を6倍すれば1分間の脈拍数がわかります。1分間に120回/分以上、または40回/分未満でしたら、不整脈の疑いがありますので、お近くの医療機関を受診してください。

検脈の方法(出典:心房細動ウエブサイト)

それ以外にも、体に負担をかけずに、一般の方が簡易に記録できる心電図デバイスが販売されています。その1例としてオムロン携帯型心電計(オムロンヘルスケア)があります。気軽に心電図が測定できる反面、計測時間が短くなってしまうため、心房細動の検出頻度はそれほど高くありません(検出頻度1.1~3%2)。一方で体に張り付けるタイプのパッチ型心電図モニターは、胸に貼るだけで2週間の自動連続記録が可能です。心房細動の検出頻度は比較的高く(検出頻度4%3)、これを用いた検査が医療保険適応となっている機種も出ています。しかし、解析に医学的な専門知識が必要であり、わが国では、医療機関での使用に限定されています。

左:オムロン携帯心電計、中央:パッチ型心電計(フクダ電子 eMEMO)、右:心電図が計測できるスマートウオッチ

それ以外にも、体に負担をかけずに、一般の方が簡易に記録できる心電図デバイスが販売されています。その1例としてオムロン携帯型心電計(オムロンヘルスケア)があります。気軽に心電図が測定できる反面、計測時間が短くなってしまうため、心房細動の検出頻度はそれほど高くありません(検出頻度1.1~3%2)。一方で体に張り付けるタイプのパッチ型心電図モニターは、胸に貼るだけで2週間の自動連続記録が可能です。心房細動の検出頻度は比較的高く(検出頻度4%3)、これを用いた検査が医療保険適応となっている機種も出ています。しかし、解析に医学的な専門知識が必要であり、わが国では、医療機関での使用に限定されています。

ユーザーが好きな特に脈拍や脈のリズムを測定できるように、スマートフォンやスマートウオッチも活用されています。スマートフォンのカメラやスマートウオッチの裏面についたセンサーで脈波を測定して脈拍の乱れを検出できるものや、アップルウオッチのように心電図が測定できる機能がついているスマートウオッチなどがあります。これらのほとんどが、ブルートゥースで自分のスマートフォンと接続して、専用のアプリを用いてデータを管理することができます。なかには、不整脈の有無について自動診断までできるものも登場しています。

心房細動は高齢になるほど発症率が高くなりますが、それ以外にも高血圧、心不全、糖尿病、睡眠呼吸障害、肥満を含むメタボリックシンドロームを有していている方、喫煙している方やアルコール摂取量が多い方は心房細動の発症率が高くなると報告されています。このため、生活習慣の是正や、適度な運動、体重管理は心房細動発症予防に有効です。すでに上記疾患をお持ちの方も、疾患のコントロールが心房細動発症の予防に有効です。

心房細動は早期の発見と治療が重要です。心房細動が疑われる自覚症状があったり、自分で脈を調べておかしいと感じたりした場合は早めに医療機関を受診して心電図検査を受けてください。また、現在症状がない方も心房細動の早期発見につながる心電図検査を受けるよい機会にもなりますので、定期的な検診の受診をお勧めします。

  1. 2020 年改訂版 不整脈薬物治療ガイドライン JCS/JHRS 2020
  2. Svennberg E, Engdahl J, Al-Khalili F, Friberg L, Frykman V, Rosenqvist M. Mass Screening for Untreated Atrial Fibrillation. Circulation 2015;131:2176-2184.
  3. Steinhubl SR, Waalen J, Edwards AM et al. Effect of a Home-Based Wearable Continuous ECG Monitoring Patch on Detection of Undiagnosed Atrial Fibrillation: The mSToPS Randomized Clinical Trial. Jama 2018;320:146-155.

(予防医学センター/循環器内科 荷見映理子)

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