東京大学医学部附属病院 予防医学センター

健康コラム

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C型肝炎とは?

C型肝炎とはC型肝炎ウィルスの感染により肝臓に炎症が生じる疾患です。炎症によって肝臓の細胞が壊され、肝臓の機能が低下していきます。
C型肝炎ウィルスは、C型肝炎ウィルスのチェックができなかった過去の輸血や血液製剤、刺青などにより感染します。
前回『ウィルス性肝炎とは?』のなかで急性肝炎の症状について記載しましたが、C型肝炎ウィルスは、感染しても重症化せず、急性肝炎としての自覚症状がない場合もあります。劇症化は稀です。
感染予防のためのワクチンはありません。

C型肝炎ウィルスに感染すると?

肝炎ウィルスに感染して肝臓で増えたウィルスが血液中に持続的に出ている人のことを、肝炎ウィルスキャリア(ウィルス保持者)とよびます。現在、C型肝炎ウィルスキャリアは全世界で1億7,000万人、わが国で100万~150万人存在すると推定されています。
C型肝炎ウィルスに感染すると、約30%では急性の経過でC型肝炎ウィルスが排除されます。約70%はキャリアになり、慢性肝炎へと移行します。慢性化した場合、C型肝炎ウィルスの自然排除はまれであり、感染による炎症が続いたまま治療せずに放置すると、肝硬変に至ったり、肝細胞がんを発症することがあります。

C型肝炎ウィルスの治療について

ウィルスの完全な排除が治療の目標となります。
近年、C型肝炎ウィルスに対する治療薬は急速に進歩しています。
以前は、インターフェロンという注射薬が主な治療薬でしたが、近年、飲み薬(直接作動型抗ウィルス薬)によってウィルスを90%以上排除できるといわれています。
肝炎の進展度やウィルスの性質により治療薬が異なるため、肝臓を専門とする医師の指導のもと正しい治療を選択することが重要です。検査や治療に対しては医療費の助成も受けられるようになっています。
なお、抗ウィルス薬を使用しない(できない)場合には、肝庇護薬や注射薬を用いることもあります。

おわりに

抗ウィルス薬によって体内からC型肝炎ウィルスがいなくなっても、これまで悪くなってきた慢性肝炎や肝硬変などの肝臓病そのものが完治したわけでは決してありません。肝臓病そのものの経過観察を継続することが、重要です。とくに肝臓病が進行してしまった方は、肝細胞がん合併の危険性が引き続き残っていると考え、定期的な採血および超音波検査やCT・MRI検査などの画像検査を受けることが重要です。

参考文献:
C型肝炎治療ガイドライン(第8版)2020年7月

(西川尚子)

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