東京大学医学部附属病院 予防医学センター

健康コラム

健康コラム

大腸憩室

大腸とは?

大腸は、口から食べた物の消化と吸収をする消化管の終盤に位置する約1.5mの管(くだ)のような臓器です。大腸は結腸・直腸に分けられ、結腸の役割は液状となった内容物から水分を吸収して糞便にして直腸に送ることです。

大腸憩室とは?

大腸憩室は、結腸の内側の膜が弱くなった筋層を越えて突出した袋状の構造です。その大腸憩室を持っていることを大腸憩室症といいます。大腸憩室自体は悪いものではなく、ほとんどの憩室症では症状はみられません。

大腸憩室症について

中高年者、便秘傾向な方に多いと考えられております。日本では大腸憩室を持っている方は増加傾向ですが、米国と比較して少ないです(2011年までの報告)。日本では大腸憩室は右側の結腸に多く、年齢とともに左側の結腸の割合が増加する傾向があります。

大腸憩室はまれに炎症や出血をきたすと以下の疾患を引き起こします。

①大腸憩室炎

大腸憩室に炎症をきたすと大腸憩室炎となります。症状は腹痛や発熱などがあります。大腸憩室炎を引き起こす正確な頻度はわかっておりません。死亡率は、膿(うみ)がたまったり等の合併症がある場合は2.8%ですが、合併症がない場合は0.2%です。喫煙が大腸憩室炎の合併症を悪化させるのに関与している可能性が高く、肥満も関連が示唆されておりますが、その他の発症や悪化の関連ははっきりしておりません。診断は、CT等の画像検査で行い、治療は、原則的に抗菌薬投与など内科的治療を行います。

②大腸憩室出血

日本では大腸憩室をもっている人の(累積)出血率は0.2%/年、2%/5年、10%/10年と報告され、出血率は増加傾向と考えられています。また、再出血率は1-2年で30-40%程度と比較的再出血をきたしやすいといわれております。大腸憩室出血および再出血リスクを高める要因として、低用量アスピリンなどの血液をサラサラにする薬や非ステロイド性抗炎症薬という解熱鎮痛薬服用者の増加が推定されております。頻度は高齢者に多く、男性に多い傾向があります。死亡率は1%程度ですが、大腸憩室出血の自然止血率は70~90%程度です。診断は造影CTなどの画像検査、大腸内視鏡検査が用いられ、治療は安静・点滴を行い、出血が多い場合などは、緊急の大腸内視鏡検査を行います。どうしても止められない場合は動脈塞栓術や手術を考慮いたします。

以上が大腸憩室症、大腸憩室から引き起こされる疾患についてです。

大腸憩室の有無が気になるようでしたら一度大腸内視鏡検査などを受けてみてはいかがでしょうか?

参考文献:
日本消化管学会雑誌
大腸憩室症(憩室出血・憩室炎)ガイドライン 2017

(佐久間)

ホームへ戻る