東京大学医学部附属病院 予防医学センター

健康コラム

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心血管ドックについて

今回の健康コラムでは心血管ドックについてご紹介します。
心血管ドックには1)血圧脈波検査、2)心臓超音波検査、3)頸動脈超音波検査、4)血液検査が含まれます。
一つずつ検査内容をみていきましょう。

1)血圧脈波検査

血管(動脈)の硬さや詰まりの程度を測定する検査です。検査方法は下記をご覧ください。心臓足首血管指数(CAVI : cardio ankle vascular index)と足関節上腕血圧比(ABI : ankle brachial pressure index)という2つの指標を測定することで、血管年齢や下肢動脈の狭窄などがわかります。血管年齢が実年齢よりも高い場合や下肢動脈の狭窄が疑われる場合には、動脈硬化が進んでいると考えられます。動脈硬化は自覚症状なく進行し、心筋梗塞や脳梗塞といった命にかかわる病気を引き起こすこともあるため、早めに気づき予防することが大切です。もし動脈硬化の傾向がみられた場合には、糖尿病・高血圧・脂質異常症などの生活習慣病や、喫煙などの動脈硬化を促進させる要因を減らすことが非常に重要となります。

両腕両足首に血圧のカフを巻き、両手に心電図をつけ、胸元に心音のマイクをつけて検査を行います。 検査時間は5~10分ほどで痛みは伴いません。

 

2)心臓超音波検査

この検査では、心臓の収縮・弁の動き・心筋の性状・心臓の大きさなどがわかります。拡張型心筋症や肥大型心筋症といった心筋の病気、狭窄症や閉鎖不全症などの弁膜症、生まれつきの心臓の異常などを発見することが得意な検査です。冠動脈をみることができますかという質問を受けることがありますが、残念ながら冠動脈の狭窄を直接みることはできません。しかし心臓の収縮能を評価することで冠動脈疾患の気づきのきっかけになることはあります。また、息切れや足のむくみが気になるときには、原因検索の助けとなる検査ですので、ぜひ受けてみてください。

 

3)頸動脈超音波検査

頸動脈は脳に血液を送る大切な血管です。この検査では頸動脈の血管壁の厚さや血管壁の状態を観察することができます。血管壁が肥厚していると、心筋梗塞や脳梗塞などの動脈硬化性疾患を起こしやすいことが知られています。血管壁肥厚の指標として、内膜中膜複合体厚(IMT)があります。動脈壁は3層(内膜・中膜・外膜)から成りますが、そのうちの内膜と中膜をあわせた厚さのことです。IMT1.1mm以上で動脈硬化の傾向ありと判断されますが、当センターでは既往歴や他の検査結果などを踏まえて、総合的に評価して皆様に結果をお伝えしています。

また、血管の内側にコレステロールなどのかたまりの隆起(プラーク)が形成されることがあり、これが不安定化して破裂すると血栓ができて血管を塞いでしまい、血流が途絶えてしまうこともあります。このような重篤な事態を避けるためにも、早めに動脈硬化の有無を評価し、糖尿病・高血圧・脂質異常症などの生活習慣病を管理することが重要となります。

 

4)血液検査

BNPとリポタンパク(a)という2項目を測定します。BNPは心不全のマーカーとして使われていますが、この数値だけで心不全かどうかを診断することはできません。(基準値を超える=心不全ではありません。) 年齢や腎機能や不整脈など、様々な要因がBNP値に影響することが知られていますので、当センターでは心エコーや心電図など他の検査結果や持病を併せて総合的に評価し判定しています。

リポタンパク(a)は、悪玉コレステロールとして知られているLDLの構成成分であるアポ蛋白Bとアポ(a)が結合した脂質と蛋白の複合体で、動脈硬化の独立した危険因子です。年齢・食事・運動に影響されず、遺伝的素因で90~95%決まると考えられています。そのため、食事・運動療法で数値を改善させることは難しいですが、リポタンパク(a)が高い方はより一層、高血圧・糖尿病・脂質異常症・喫煙などの危険因子に留意していただければと思います。あまり測定する機会のない検査項目ですので、ぜひ人間ドックで確認してみてください。

以上、心血管ドックのご紹介でした。オプション検診の選択に迷われたときにぜひご参考になさってください。

(大関敦子)

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