東京大学医学部附属病院 予防医学センター

健康コラム

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高血圧ってどんな病気?

高血圧は自覚症状がほとんどないため、健康診断で指摘されてもそのまま放置してしまう人が少なくありません。しかし、糖尿病や脂質異常症などとともに、心筋梗塞や脳梗塞の危険因子の一つと位置付けられる重要な生活習慣病です。日本における高血圧有病者数は約4300万人と推定され、60歳代以上の60%が高血圧と言われています。高血圧になると血管に常に負担がかかるため、血管の内壁が傷ついたり、柔軟性がなくなって固くなったりして、動脈硬化を起こしやすくなります。高血圧を正しく理解し、予防のためにライフスタイルを改善したり、適切な治療を受けることが大切になります。
そもそも高血圧とは、安静状態での血圧が慢性的に正常値よりも高い状態をいいます。ちょっとしたきっかけ(気温の変化、睡眠不足、緊張や興奮、急激な運動など)による一時的な血圧上昇は高血圧とは言いません。そこで、高血圧と診断するためには正しい血圧測定が必要になります。血圧は健康診断時や病院受診時に測る方が多いと思いますが、高血圧の診療方針をまとめた「高血圧治療ガイドライン2014」では、「診察室血圧と家庭血圧の値に差がある場合には、家庭血圧による診断を優先する」と、家庭血圧が重視されています。家庭血圧での高血圧診断基準は収縮期血圧135mmHg以上・拡張期血圧85mmHg以上と、診察室での診断基準(収縮期140mmHg以上・拡張期90mmHg以上)よりもやや低めに設定されています。(図1)

図1 血圧測定と高血圧診断手順(高血圧治療ガイドライン2014より)
家庭血圧の測り方をご紹介しますので、ぜひ測定してみましょう。

◇椅子に座り、1~2分安静の後に測定しましょう。
◇上腕カフ式血圧計を使用しましょう。
 心臓の高さに近い上腕部での測定が最も安定しています。
◇起床後と就寝前に2回ずつ測定し、朝と夜それぞれの平均値を出しましょう。
◇朝は起床後1時間以内。排尿後、朝食や薬を飲む前に測定しましょう。
◇夜は就寝前。夕食や飲酒直後、入浴直後の測定は避けましょう。

家庭血圧が基準を越える日が多いようであれば、まずは食生活や生活習慣を見直しましょう。塩分の多い食事は血圧上昇の原因となります。1日6gまでの摂取を目標にしましょう。また、肥満や運動不足は動脈硬化を促進させ高血圧の原因となります。通勤でのウオーキングなど毎日30分程度の有酸素運動を心がけ、適正体重を維持しましょう。喫煙・アルコールの過剰摂取・睡眠不足なども血圧に影響しますので気をつけましょう。生活習慣を見直しても血圧が下がらない場合には、降圧薬治療を考慮することになります。降圧目標(図2)は年齢や合併症によってかわってきますので、かかりつけ医をつくり相談しましょう。
高血圧治療ガイドラインは2019年に改訂される予定ですので、最新情報をまたこのコラムでご紹介します。

図2 降圧目標(高血圧治療ガイドライン2014より)

(大関敦子)

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