東京大学医学部附属病院 予防医学センター

健康コラム

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薬物乱用頭痛ってどんな病気?

頭痛は頻度の高い疾患であり、片頭痛は我が国の人口の5~10%、緊張型頭痛は20%に認められるという報告があります。軽度の頭痛であれば市販の頭痛薬の使用により改善することも多いため、頭痛有病者の65%は病院を受診した経験がなく、また57%は市販の鎮痛薬で対応しているという報告もあります。

しかし、頭痛薬の過剰な使用により、かえって頭痛を増悪させてしまうという病態があることをご存知でしょうか。薬剤使用が引き金となって、痛みに対する感受性が亢進することにより、頭痛頻度や持続時間が増加して、慢性的に頭痛を呈することがあり、これを「薬物乱用頭痛」と呼びます。もともと片頭痛や緊張型頭痛を有する方が、薬物乱用頭痛の状態になりやすいといわれており、関節リウマチなど頭痛以外の伴う疾患に対して大量に鎮痛薬が使用される疾患で生じることは極めてまれです。薬物乱用頭痛の頻度は1~2%といわれており、緊張型頭痛、片頭痛に次いで多い頭痛です。また以前は医療機関でしか手にはいらなかった鎮痛薬が最近薬局で店頭販売されるようになった影響により、今後増加することが懸念されています。
原因となる薬剤は、非ステロイド性鎮痛薬や、エルゴタミン、トリプタン、複合鎮痛薬等であり、市販の鎮痛薬を乱用しているケースも多くみられます。

診断のポイントは下記の通りです。

  • 頭痛は1か月に15日以上存在する。
  • 3か月以上、下記薬剤を乱用している。
     エルゴタミン、トリプタンまたは複合鎮痛薬などを1か月に10日以上内服している。
     または単一成分の鎮痛薬を1か月に15日以上内服している。
  • 頭痛は薬物乱用により発現したか、著明に悪化している。

治療としては、以下が行われます。

  1. 原因となっている薬剤の中止(即時に中止する方法と漸減中止する方法がありますが、即時中止のほうが、治療効果が高いといわれています。)
  2. 薬剤中止後に起こる頭痛への対処
  3. 予防薬投与

もともとの頭痛(片頭痛、緊張型頭痛等)の予防薬(アミトリプチン、バルプロ酸、ロメリジン、プロプラノロール等)を使用します。

1~6か月後の治療成功率は70%ですが、長期的には40%で再発もみられるため、医療機関をきちんと受診し治療に取り組むことが重要です。頭痛の頻度が高く、市販薬も含めて鎮痛薬等を1か月に10日以上内服している状態が続いている、内服しても効果がなく薬を飲みすぎてしまう、というような場合は、薬物乱用頭痛の可能性がありますので、まずはかかりつけ医へのご相談をお勧めします。

診断には、もともとの頭痛の性質や服用薬剤の種類・服用量・服薬期間等の詳しい情報が重要ですので、受診の際には、ぜひ頭痛ダイアリー(頭痛日数、頭痛の性状、誘発因子、随伴症状、薬剤使用状況、効果などの記録)をお持ちになることをお勧めします。また、薬物乱用頭痛にならないために、普段から市販薬を含め鎮痛薬等を飲みすぎないように注意しましょう。

(松本ルミネ)

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